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  • 執筆者の写真bicycleplanner

バイクインプレッション

HGSBT「Racer」モデルのインプレッションを長野県「やまめ工房」代表の堂城 賢さんより頂きました。

※著書に自転車の教科書を出版されています。

フィティングや走り方の指導も行いフレームオーダーも可能です。試乗車もありますのでご訪問の際は是非一度乗ってみて下さい。


下記、頂いたインプレッションご一読下さい。

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これまで数多くのロードバイクに乗って来ましたが、新たに製作されるこの試乗車のフレームでは、市販のロードバイクでの不満な部分や、ポジションやジオメトリーといった、市販車では絶対にできない事を試してみたかった。

 具体的には極限まで短くしたヘッドチューブ長と、ハンガー下がり60mmという、市販車にはできないジオメトリーで、特に短いヘッドチューブ長は、スチールフレーム・スチールフォークでなければ実現できない非常に重要な部分だと思います。 私がお願いしたのは、トップチューブ長、ハンガー下がり、ヘッドチューブ長のみで、パイプや細かな寸法やデザインはビルダーの東畠さんにお任せしました。

届いたフレームは、注文通り短いヘッドチューブ長で、シートチューブ515mm・トップチューブ550mmの完全なホリゾンタルで、物凄くカッコイイ! 縦に潰しの入ったシートステーやフォーククラウンの形状、ブレーキのブリッジのデザインと、色を剥がしてもHGSBTと一目でわかるデザインには、組み立てる前から正直やられっぱなしでした。

これまで私が乗っていたフレームよりもハンドル位置が3~4cm下がるのですが、思っていた通りハンドルの下を持った時もブレーキのブラケットを握った時も、走行中に上半身も呼吸も非常に楽になりました。 肘を中途半端に曲げた状態にならず、クランクを回した瞬間にハンドルを「軽く引き込む」力が自然に生まれるのがハッキリとわかります。

写真で見るとハンドルとサドルとの落差は非常に大きいのですが、私の感覚は「深い前傾姿勢」をとっている感覚は全くなく、むしろ「身体を起こして乗っている」感覚で、ハンドルが高かったこれまでの方がむしろ「深く前傾姿勢」をとっている感覚です。 短いヘッドチューブ長と60mmというハンガー下がりが生み出したこの感覚は、私が想像した通り・・・というより想像以上で、本当に姿勢も呼吸もこれまで以上に楽になりました。

スチールフレームと言っても、トップチューブからヘッド回りがしなやかで、先曲がりのフロントフォークで組まれたスチールフレームとは全く違い、しっかりとしたストレートフォークと相まって、感覚は正に「レーサー」そのもの。 トップチューブからヘッド回りのしっかりとした剛性は、速度を出した時に安心感が非常に高く、実際下りやコーナリングが非常に速いです。 以前長期間タイヤのテストをしていた際、フレームとホイールがしっかりしていないとタイヤが接地している感覚が分かり難いと感じたことがあり、それ以来フレームやホイールはしっかりした物を選ぶようになりました。 HGSBTのしっかりしたフレームは、タイヤの動きを感じやすく、それがコーナリングや下りの安心感に繋がっているのだと思います。 ホイールはCRODERのカーボンホイールで、25mmのチューブラータイヤを普段から使っていますが、非常に楽に速度を上げることができるこのフレームと、高い速度域で慣性を生み出すカーボンリムとの相性は非常に良好で、私の所有している他のロードバイクで同じ速度を出した際の「楽さ」や、その速度まで到達する「時間」が全く違い、この試乗車を手放したくないというのが本音です。

登りも非常に楽で、フレームのダウンチューブのしなりを利用する、いわゆる「休む立ち漕ぎ」が非常にやりやすいです。 HGSBTのフレームのダウンチューブは、ヘッドチューブ側から10cmくらいの、丁度チューブのバッテットしている場所辺りから横方向にしなるのですが、フレームをしならせた際の反発が小気味よいペダリングのリズムを生み出してくれます。

ダウンチューブだけではなくバック全体もしなる感覚のフレームが多い中、しっかりとしたチェーンステーがこのフレームの小気味良さを生み出し、あの縦に潰した細いシートステーがHGSBTのガチガチではない乗り心地を生み出しているのではないかと思います。

後ろ三角のしっかりした感じと、小気味良く反発するダウンチューブ。 しっかりとしたヘッド回り・ハンドル回りの剛性とフロントフォーク。

本当によく考えて設計されているフレームであると私は感じましたが、そういったフレームビルダーの想いを感じ取れるかどうか、それを生かせるかどうかはライダー自身だと思います。 どういったパーツを組み、どのようにして乗るかで作り方を変えられるのがスチールフレーム。 私がビルダーの東畠さんに求めた「スチールフレームのレーサー」を作ってほしいという要望は、すべて満たされているフレームであると感じました。

私がこのフレームに乗るようになってからスクールに来られた生徒さんは、楽に速く走っている私の姿を見ています。 「ペダリングをすると自然に力が生まれますね」 それが私の生徒さんがこのフレームに乗った際の印象で、それはこのフレームで実現できたハンドルの位置によるものです。 このフレームに乗り込み、フレームのしなる場所やしなり方、路面と接しているタイヤの動きを感じられるようになれば、HGSBTのスチールフレームの「本当の魅力」を感じ取れるようになるのではないかと思います。

私はこのフレームをもう返したくない。

  以上です。 

やまめ工房  堂城 賢



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